フランスを代表する老舗メゾン「Louis FAGLIN」(ルイ ファグラン)6代目、そしてマネージングディレクターとしてパリ「サントノーレ」通りに自社ビル・横浜山手にSHOWROOMを持ち、日本とフランスを行き来しています。
Louis FAGLIN | ルイ ファグラン
1899年、フランスで発祥したブランドで、メンズのアクセサリーを作り続けているメゾンです。貝ボタンメーカーから始まり、カフリンクスメーカーとして成長、創業以来、多くの世界的著名ブランドのカフリンクスを作り続けてきました。
1924年には、当時オーナーであった4代目ボワイエ氏が "Tリンク"フランス語では "batonnet" と呼ばれるカフリンクスの回転する足(Swivel式)を発明。現在のカフリンクスの原型を作り、使いやすい形状が人気となり世界中に広がり、ジェントルマンのエレガンスには欠かせないアイテムとなったのです。
そして、一世紀以上もの間、フランス職人が開発してきたカフリンクスの【シークレットヴィンテージコレクションアーカイブ】を実に15,000デザイン以上を保有。
その中から選りすぐりをセレクションし、復刻モデルとモダンに進化させたモデルを発表し、モダンなジェントルマンにフレンチエレガンスのスタンダードを発信しています。
ARCODIO---本日はお忙しい中、大変貴重な機会をいただきありがとうございます。はじめに、パスカル氏のこれまでの経歴等を教えていただけますでしょうか。
パスカル氏---僕がファッション業界に足を踏み入れたのは18歳の時です。Christian Dior(クリスチャン・ディオール)のパトロンであったMadame Zehnacker、別名"スタジオ管理者のマダムレイモン"とのご縁からディオールメゾンに勤め、クリエーション舞台の裏側やショップ運営を学んだことから始まりました。今考えると、大変なラッキーボーイでした。
21歳の時にはCHARLES JOURDAN(シャルル・ジョルダン)の輸出コマーシャルディレクターの仕事と、パリのショップオーナーMonsieur Marc Algaraの元で勉強して、輸出や販売の仕事を手掛けるようになり、1985年24歳の時に独立しました。
パスカル氏---こちらの写真はちょうど独立した頃で、パリ1区にあるRue St.Florentinに「Claude Reyner」のショップをオープンしたときのものです。
この年をさかいに複数の有力メーカーとの懇親が深まり、ちょうど日本のバイヤーの方々から、まだ日本に紹介されていないインターナショナルブランドを紹介して欲しいとリクエストが入りました。
そして、パリで知り合いパートナーになった蘭と、まだ日本で知られていない話題のフレンチブランドを日本に紹介・販売をする計画を立てました。
1986年、日本に法人株式会社を立ち上げ、蘭が代表、僕はプロデューサーとして就任。以降、これまで日本のセレクトショップ(Beams, Ships, Tomorrowlandに始まり、United Arrows, Barneys, Edifice, Estnation, Isetan …etc)で数々のフレンチブランドを取り扱っていただきました。
ARCODIO---そうそうたる面々の登場と、24歳という若さでの独立に驚きましたが、日本との関係がスタートしたことには奥様である蘭さんのサポートも大きかったのですね。
当時の日本はちょうどバブル期でしょうか。そして徐々にセレクトショップも広がり、皆がファッションに目覚め、おしゃれを競い合うようにしてセンスを磨き、ファッションを楽しんでいたような時代ですね。
ARCODIO---パリでオープンした「Claude Reyner」ではどのようなアイテムを扱っていたのでしょうか。
パスカル氏---ショップではClaude Reyner(メンズウェア)、Seraphin(メンズ高級レザーウェア)、Edelweiss(由緒ある手作りネクタイの大元)、Le Garage(アバンギャルドなシャツメーカーでPaul and Joの父親のブランド)、ACDG(メンズカジュアルシャツで初めてストーンウォッシュシャツを世に送り出したブランド)などを取り扱っていました。
当時の日本は、ヨーロッパからのインポートブーム初期であり、日本のセレクトショップと共に成長し、1998年バブル崩壊後の日本でアパレルが苦戦している頃は、日本のニーズに的中するピーコートをメインとするコレクションJ.P.GASSAを発掘しました。
ARCODIO---輝かしい功績ですね!日本に「Louis FAGLIN」が紹介されたのはいつ頃でしょうか。
パスカル氏---はじめて日本に「Louis FAGLIN」のアイテムを展開したのは2002年でした。当時はヨーロッパのとくにプロフェッショナルの間でしか知られていなかったので、他には無い、フランスらしい手に届くラグジュアリーと大変ご好評いただきました。
私自身は2012年にルイファグラン6代目としてヘリテージを受け継ぎ、今に至ります。
ARCODIO---Louis FAGLINの歴史と魅力を教えていただけますでしょうか。
パスカル氏---Louis FAGLINはヴィンテージアーカイブからのインスピレーションを大事にしています。本物志向のデザインとレアなヴィンテージストーンや昔ながらの技法を使用する事でメンズジュエリーとアクセサリーにシックなラグジュアリーを提供しています。
当時、アーカイブのことは誰も知りませんでした。大きな著名メゾンとコラボするときに、その名前を出してはいけないという暗黙の了解があったからです。これまで様々なメゾンやデザイナーのために作られたシークレットアーカイブと言われているものです。
2012年に5代目オーナーが引退し、私が6代目として受け継いだヘリテージから、アーカイブの素晴らしさをコレクションに使用するべき、との想いが溢れ、各シーズン豊かなヴィンテーコレクションの中から選りすぐりのセレクションをし、復刻モデルとモダンに進化させたモデルをコレクションとしてまとめています。
・15,000デザインのアーカイブ
・10,000個のナンバーゼロと呼ばれるデザインの原型
・数万個のヴィンテージストーン
・EPV(※)を含む下請け工場のリスト
※EPVとは "Entreprise de Patrimoine Vivant "の略。( 英語では"Living Heritage" )
フランスが誇るクオリティーラベルで伝統的な技法、クラフトマンシップ、ノウハウを極める会社にのみ国が与える特別な称号のこと。
パスカル氏---私は1年の歳月をかけて、丁寧に整理をしたアーカイブの数々に魅了され続けました。そしてわかった事は、1世紀かけて創られたカフリンクスやタイバー等からファッショントレンドと、カフリンクスの真の歩みが確認出来る事の素晴らしさです。
古いものたちがこんなにも新鮮である事、世界中のファッションピープルはヴィンテージ物に目が無い、私もその一人ですね。
Louis FAGLINの膨大なアーカイブは、まさに本物のヴィンテージ世界です。現代人には思いつかないデザインソースが多々あります。
ARCODIO---奥深いフランスのファッション業界で歩んできたパスカル氏の経験とノウハウ×秘密のアーカイブがLouis FAGLINの魅力ですね!
パスカル氏---膨大なアーカイブには時代ごとのトレンドが反映されていて、歴史を見ることができるのです。年代別のトレンドや、昔ながらなテクニックを復刻版として作り直す楽しさは格別でした。
メンズのエレガンスと、ステータスシンボルとしてカフリンクスとタイバーは不可欠であり、また新たにカジュアルにも使用できるピンズやラペルピンも、コレクションに加わりました。
パスカル氏---1924年は記念すべき年です。当時オーナーであった4代目であるボワイエ氏が "Tリンク"フランス語では"batonnet"と呼ばれるカフリンクスの回転する足(Swivel式)を発明したのです。
これまでボタンとボタンを鎖で繋いでいたカフリンクスよりも使いやすい形状が人気となり世界中に広まり、この事実はASSOULINE社発行のKarl Lagerfeld(カール・ラガーフェルド)がカフリンクスの歴史を語るBBOUTONS de MANCHETTESに記載されています。
ARCODIO---Louis FAGLINがカフリンクスの歴史と進化にどれほど大きな役割を担ってきたのか分かりますね。
日本ではカフリンクスをカフスボタンと言ったり、フレンチカフスをダブルカフスと言うことが多いのですが、フレンチカフスという名前の由来にはどのような背景があるのでしょうか。
パスカル氏---カフリンクスは17世紀のフランスで装飾のためにボタンをチェーンでつないだものからはじまりました。最初のカフスボタンは王様、貴族、上流階級のもので、マザーオブパールを使用した貝ボタンをファンシーにするためにチェーンを付けたり、アーカイブの歴史からも分かるように、ゴールドのボタンにチェーンを付けたカフスボタンが作られていました。
フランス語で折り返しのあるカフス(ダブルカフス)は「Poignet Mousquetaire(ポワニェ ムスクテール=銃士隊のカフス)」と言います。
Poignetは袖口、Mousquetaireは銃士隊で、三銃士が由来しています。そのため、フレンチカフスと言うのです。
パスカル氏---その後、イギリスではダブルカフスと呼び、シルバーのカフリンクスが増えていったのです。
ARCODIO---なるほど。この数年間はゴールドやローズゴールドなどがまたトレンドで多くなってきていましたが、もともとは貝やゴールドのカフリンクスが最初で、そのようなルーツがあったのですね。大変興味深いお話を聞かせていただきありがとうございます。
ARCODIO---今回、ARCODIOがセレクトしたCOLLECTIONについてはいかがでしょうか。
パスカル氏---今回のセレクトは比較的ゴールドのものが多いですが、バリエーションが広く、着る方のコーディネートにマッチングしやすいタイプを選んでいると感じました。
ポップアップははじめての試みですが、ちゃんと色々な人にマッチングできるチョイスはとても嬉しいことです。
ARCODIO---カフリンクスやタイバーのコーディネート方法やドレスアップスタイルを綺麗に新鮮に見せる方法など、何かコツがありましたら是非教えてください。
パスカル氏---カフリンクスやタイバーを選ぶときは、普段使っているベルトや時計、持っているアクセサリーやブレスレットなどと色の組み合わせを意識しながら選んで欲しいです。
私は色の組み合わせをいつもすごく気にしていて、実は昔から下着のパンツと靴下の色は揃えると決めています(笑)このようなこだわりは私だけではなく、フランス人は見えないところからお洒落をするのが好きなのです。
例えば、タイバーの裏側にルビーやサファイヤなどの宝石が入っていることがあります。なぜ宝石を表に入れないのか聞かれますが、外した時にはじめてチラッと見える裏側に付いているのがお洒落でいいじゃない!と私は思います。
ARCODIO---見えないお洒落に気をつかうところに余裕と歴史が感じられますね。まさにフレンチエレガンスでしょうか。
本日のコーディネートではどのようなこだわりがありますでしょうか。
パスカル氏---今日のジャケットはゴールドとシルバーのツートーンなのでカフリンクスもツートンにしました。しかしタイバーまでツートーンにするとしつこいので、角ばったものではなく、形に統一感を持たせて丸みのあるタイバーを選びました。
ARCODIO---素敵なコーディネートですね!日本のビジネスマンはスーツスタイルをどのように楽しんだらよいか分からない方も多いと思いますので、アドバイスをお願いします。
パスカル氏---私は1986年にはじめて日本に来ましたが、もともと着物の文化だった日本は洋服の歴史が浅く、ファッションに対するマーケットもまだまだこれからといった様子でした。しかし学ぶスピードがとても速いと感じました。
日本の人たちはファッションに対して目で見てじっくり観察して、これが正解といった気持ちが強いと思います。その一方で、誰かがこのスタイルが正解です!と言ったらそうするため、自分のテイストに欠けていることが気になりました。
パスカル氏---本当にファッションを楽しむためには、これはおかしいんじゃないかとか、会社ではNGかもしれない、などと考えすぎたり制限されないで欲しいです。メンタルの部分でもっと自由に、怖がらないことが大事。自分の好きなものを選んで色のコンビネーションを意識してコーディネートを楽しむことをおすすめします。ふたつのアイテムを同じ色で揃えるなど、ポイントをおさえると綺麗にまとまりやすいですよ。
日本人はファッションに対してとても敏感で、良いモノも好き、必要なのはちょっとした勇気と、やらないとバカみたいだねっていう楽しむ気持ち、怖がらずに好きなものを着る気持ちが大切だと思います。冒険する気持ちを止めず、もっと自分の好きなものを表現すれば良いと思います。
ビジネスマンにとってカフリンクスは少し派手なんじゃないかと臆病になる気持ちもあると思いますが、全然そんなことはないですよ!ジェントルマンルックは無理だと思っている人も、身近なもので挑戦してみようということが楽しいじゃないですか。
もともと1924年に開発された回転足(Tリンク)の仕様は誰もがカフリンクスを付けて楽しめるものにしたかったのですから、きちっとしたスーツスタイルでのカフリンクスだけではなく、白いジーンズとブレザーにカフリンクスも良いし、ブラックシャツやデニムに合わせても良いのです。どのようなパターンにカフリンクスを付けても素敵になるのです。
メンズファッションは女性に比べて許されたアクセサリーが少ない中で、カフリンクスやタイバーはちょっとしたお洒落で、身に着けることでワンランク上がる気持ちになるのではないでしょうか。
ARCODIO---何だかポジティブな言葉が色々と浮かんできました。ファッションはお洒落とか美しいとか、そのような外見だけではなく、身だしなみを気を付けている人とか、良い仕事をしている人なのかなといった、ファッションの裏には細かいことに気をつかえる人、ずぼらではない人という印象を与えてくれますね。
女性から見てもカフリンクスが袖からチラッと見えると、ファッションが好きで身だしなみを気にかけている人だろうと、良い印象を感じますし、プレゼントにも選びたいアイテムです。
ARCODIO---コロナで世界中が暗い気持ちになった中、長い間ファッション業界にいらっしゃるパスカル氏はどのようなことを感じましたでしょうか。
パスカル氏---コロナによって家でのZoom会議が増えた中、お洒落をすること、楽しむことの難しさを感じていました。売れるものはジャージやジョギングパンツになったと言うバイヤーもいましたし、上はワイシャツでも下はパジャマのパンツでZoom会議に参加している人もいるわけですから…。
そして、この2年間はオンラインショップが盛んになったといってもコロナ対策アイテムが売れていた事実があると思います。しかし、ちょうど今は次のステップに入るタイミングだと感じています。2年もの間、このような暗い中にいたのですから、自分にとって楽しいことや素敵な時間の使い方を人は必ず求めるはずです。
私は楽しむということは自分一人ではなく誰かとシェアをしないといけないと思います。その中できっとLouis FAGLINのアイテムはひとつの良いきっかけになったら嬉しいです。
タイムレスで流行りすたりがなく、価値が下がったりすることも無いですし、ギフトにも良い。女性が男性に選ぶ楽しさや、想いを伝えること、もらって嬉しいこと、自分が楽しむことと相手に楽しんでもらうこと、両方を叶えていきたいと思います。
ARCODIO---最後に、今後のパスカル氏の構想を教えてください。
パスカル氏---Louis FAGLINの技術でメンズアクセサリーのレンジを、更に広げていきたいと考えています。カラーバー、バングル、キーホルダー、万年筆等、筆記用具等です。
日本が引き金となり、スタートしたプロジェクトは、着実に今大きく羽ばたこうとしています。是非、ご期待ください!
Louis FAGLIN
大好評により販売継続決定