2006年 フィレンツェで日本人デザイナー大平智生によりスタートしたCiseiは、イタリアで学んだ伝統の技術を守りながら、良い素材のみが持つ質感をダイレクトに伝え、さらにシンプルで機能性に富んだ鞄作りをモットーとしたブランドです。
この度、Ciseiデザイナー兼、CEOの大平智生さんが日本帰国のタイミングでインタビューにご協力頂く事が出来ました。Ciseiのデザイン、モノづくりに懸ける思いについてお話を伺いました。
1973年東京生まれ 父親の建築デザイン業の影響を受け、高等専門学校にて工業デザイン学科を専攻。
1995年にイタリア・フィレンツェに留学し、本格的にデザインの勉強をし、2006年にCiseiを立ち上げ現在に至る。
Cisei公式オンラインショップ:https://cisei-firenze.com/
ARCODIO--- いつから鞄職人を目指していたのですか?
大平--- 元々、革職人を目指していた訳ではなく、高等専門学校在学中に、革を扱う授業があり、ちょっと興味を持って小物を作ったり、母親に頼まれて鞄を作ったりしていました。だたその頃は、本当に趣味程度にしか考えていませんでした。
ARCODIO--- では、イタリアに留学したのは、革製品の勉強ではなかったのですか?
大平--- はい、その頃の日本はバブル崩壊直後で就職難の時代でしたし、まだ自分が何をしたいのか考えがまとまっていない事もあり、もう少しデザインについて勉強してみようと思い、イタリア留学を決意しました。
イタリアでは環境デザインの専門学校に入学をしようと思って、まずは1年間語学学校に通い、イタリア語の勉強をしていたのですが、その頃のフィレンツェには小さい小さい革鞄の工房が沢山あって、その店先から中を覗き込んで・・・そのうち面白そうで通うようになって・・・職人達と仲良くなり、少し遊び程度に小物を作らせてもらったりしていました。それが本当に楽しくて。
それで、環境デザインの専門学校以外にも選択肢があるのではないかと思い始めて、鞄パターンの専門学校に入った事が、革鞄の世界へのスタートだったのかもしれません。
ARCODIO--- デザインの前にパターンの勉強を選んだのですね。
大平--- はい、日本で工業デザインを勉強していましたし、パターンの知識が無いと本当に良い鞄は作れませんので。ただ、ここから面白いのですが、その鞄パターン専門学校で出会った先生が、日本では考えられないですが、専門学校に教えに通うのが面倒なので、自分のパターンスタジオにきて勉強しろと・・笑
本当に可愛がってもらい、鞄のパターンについて実践的な勉強をさせて頂きました。1年ほどパターンの勉強をした後、縫製の勉強もしたいと先生に相談し、知り合いの鞄縫製工房を紹介してもらいました。しかし、素人同然の外国人にそんな簡単に技術を教えてくれるわけもなく、日本人観光客に工房の鞄を売る仕事を手伝いながら、少しづつ鞄の組み立て作業や、縫製技術を教えてもらいました。
その後、本格的にイタリアの革鞄の世界で働きたい、もっと革鞄について勉強したいと強く思い、一時帰国して就労ビザを取得して、再度イタリアに行きました。
大平--- 再度イタリアに行くと、もっと良い商品が作られる所を見たい、携わりたいとどんどん欲がでてきて、知り合いの伝手をつかって、Gucci(グッチ)の下請け工場を経営していたイタリア人が運営する、各ブランドのサンプル工場(サンプルばかり作成する工房)でパタンナーとして3年半ほど働かせて頂きました。
その後、CELLERINI(チェレリーニ)に転職して、とても高いですが、昔ながらのイタリア製法を守り、シンプルで美しいデザインに非常に魅了されました。
時間的にも少し余裕のある仕事でしたので、CELLERINI(チェレリーニ)の仕事をしながら、空いた時間に自分のデザインで鞄を勉強がてら作っていました。それが、Ciseiの始まりと言ってもいいかもしれませんね。
ARCODIO--- その頃のクリエイティブデザインは今のCiseiのようなテーストだったのですか?
大平--- いえ、その頃は、トスカーナ州が得意とするタンニン鞣し製法でつくられるバケッタレザーを使って、今のCiseiより少し荒々しい感じのテーストでした。コスト的な事もあり、表はキャンバス生地で、底と持ち手部分のみ革のコレクションが初めてだったと思います。
その初回コレクションは8型くらいだったと思います。この時点で日本を離れて10数年経っていたので、日本市場のことは全く分からないながらも、ホテルの1室で細々と自分のコレクションをバイヤーさんに見てもらいました。本当にスモールスタートのつもりが、400点ものオーダーが入ってしまい、喜ぶ間もなく慌てて生産しました。
ARCODIO--- Ciseiが世に評価され、産まれた瞬間ですね。
大平--- はい、そのタイミングでブランド名を決めたのですが、自分の名前『チセイ』は日本では商標登録されてしまっていて取れず、読み方を濁して『シセイ』になりました。
ARCODIO--- そこからの快進撃はすごかったのではないですか?
大平--- 本当に沢山の方々にご評価いただき有難いですね。ただ、イタリア独自の伝統技法で作るので、生産効率は決して高くないので、なかなか需要に対して潤沢に供給する事ができない時期もありましたが、クオリティだけは妥協したくない考えは今でも変わりません。
大平--- この14年間、ただ革鞄を作り続け、今でもフィレンツェの工房に、わざわざ日本からいらしてくださる方が沢山います。モノづくりをしている我々にとって、お客様とお会いでき、Ciseiについてのご意見や、愛用しているCiseiの感想などをいただき、本当に感謝しています。
ARCODIO--- 今後のCiseiの展望はありますか?
大平--- そうですね、以前より完全にオーダーメイドの鞄を作りたいとの想いはあります。今は、パートナー工場で生産しているのですが、オーダーはすべて自分でパターンから、組み立て、縫製までして、世界で1個の鞄を作れればいいなと思ってます。また、今回、Cisei公式オンラインショップ限定で販売開始したサケットートのように、ただモノを作る・売るだけでなく、地球環境を意識した商品にも力を入れていければと思っています。私達、クリエイターは、良いモノを作るだけでなく、最終的にお客様の笑顔と生活の一部として役にたつモノを作る事が全てだと思ってます。今後もそのような商品を作り続ける事が出来れば幸せです。