1986年1月27日生まれ
37歳、広島生まれ、東京育ち。
靴専門学校卒業後、2009年リファーレ入社。
2013年より恵比寿店勤務となり、接客、販売、修理をする傍、商品の仕入れも担当。
Rifare/リファーレ
2005年創業。イタリアやイギリス製の高級メンズドレスシューズを販売するとともに、店舗に併設された工房で確かな技術を持つ職人が修理・メンテナンスを行うシューズサロン・リペアショップ。
直営店と百貨店インショップを合わせて全国に13店舗の拠点を持ち、「リファーレ恵比寿」が本店。
Rifare恵比寿本店
住所:〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-7-1-1F
営業時間:12:00~20:00
電話:03-5768-1373
営業日:木~火曜日(水曜日定休:祝日の場合は営業)
公式ホームページ
https://rifare.jp/
ARCODIO---『職人が接客する』ということで、靴選びからメンテナンスまでをワンストップで提供してくれる凄腕の靴専門店として、革靴好きの間で確かな信頼を築き上げているリファーレ。
本日はそのリファーレの本店である恵比寿店の店長、松木さんにインタビューの機会をいただき、嬉しい限りです。大変貴重なお時間をいただきありがとうございます。
早速ですが、松木さんはどのような経緯で今の職業に就かれたのでしょうか。
松木さん---もともと人と関わることが好きで、高校卒業後はホテルマンとして2年間程働いていました。ホテル業界は接客業のトップとも言われていて、接客業を極めたいという想いがありましたが、20歳の時、イタリア旅行をきっかけに人生の方向性が変わりました。
2週間くらいの旅行だったのですが、イタリアの文化に刺激を受け、とにかく住みたいと強く思ったのです。そしてイタリアに住むためにはどうしたら良いか考えた結果、その時は革製品しか思いつかなくて…。
思い立ったら即行動するタイプの人間なので、色々とネットで調べていくうちに、気がついたら日本で靴作りの専門学校に入学していました(笑)。
ARCODIO---すごい行動力ですね。イタリア旅行の経験が人生を変えて、靴作りという接客業とは真逆のような職人業の道を選ぶことになるとは…。人生って面白いですね。はじめは靴のデザイナーや靴職人を目指して専門学校に入学されたのですか。
松木さん---そうですね。革製品の中でも手仕事で作られる靴って、よくよく考えると不思議だなと思いました。革はもともとペラペラの一枚なのに、平面のものがどうやって立体的な形になるのだろうって想像したところから、靴を作る工程に一番興味が湧きました。
2000年頃から革靴ブームが始まったこともあり、靴の学校も盛んで、優秀な先生も多く在職していました。1足を作るのに何百もの工程があるのですが、1から靴を作り上げる技術を学びました。
靴は好きだし、ファッションも好きなのですが、実際に手を動かしてみたら、靴のデザインや靴を作るということは自分にはあまり向いていないかもっていうことに気がつきました(笑)。人には向き不向きがあるようで…。小さな頃から手を動かすことは好きでしたが、やっぱり人と関わる接客も大好きだったので、我ながら、根っからの職人気質ではなかったのかも知れません。
ARCODIO---なるほど。そこで販売から修理までのすべてを職人が担う靴専門店リファーレへの入社に繋がるのですね。
松木さん---リファーレは僕にとって一番理想的なバランスでした。
複数店舗を持つような大きなお店の場合、接客や販売を行うスタッフと修理を行う職人は別々ということが一般的です。
リファーレでは担当分けすることなく、販売時の接客はもちろん、メンテナンスや修理のための状態確認やお客様のご要望のヒアリング、実際の修理から、修理後の受け渡しまで、すべてを職人が行っています。
靴の学校で勉強したことを活かしつつ、接客もできて、さらには他にも興味があった販売商品の買い付けも出来る。そのような仕入れの部分から関わり、一貫した仕事がしたいと思い、リファーレ入社に至りました。
ARCODIO---専門学校で研鑽を重ねた技術に加えて、一時はホテルマンとして接客業のトップを目指してこられたわけですから、修理やメンテナンスという部分で手を動かしつつも、職人が接客も行うリファーレでのお仕事はまさに松木さんにとっての天職なのではないかと感じました。
ホテルマンからの靴作り。イタリアに住みたいという想いから紆余曲折、とても大きなシフトチェンジされた松木さんですが、入社14年、色々なお客様の接客、修理をお受けしてきていると思います。 修理の魅力や、これまでで一番大変だったこと、苦労したことなど、印象に残っていることを教えていただけますでしょうか。
松木さん---修理といっても様々ですが、どのような時でもお客様に満足してもらうことを常に意識しています。そのためにはお客様との会話の中で、お客様の真のご要望を汲み取ることが重要です。
靴は人によって履き方の癖が異なりますし、同じ靴でも履き方、履く頻度が違えば状態が全く違ってくるので、作業方法もその都度変わります。そういうことを踏まえて、お客様のご事情やご要望に合うような方針提案を心がけています。ですので、その一つ一つが印象深く残っています。
松木さん---その中でも大変だった修理を1つあげるとしたら…。アッパーが破けて、汚れもひどく、革も乾燥して傷んでいて、普通だったらもう直さないだろうなと思うほど、何十年も履きこんだ靴を持ってこられた方がいらっしゃったときのことです。
そのような状態の靴なのですが、そのお客様にとっては思い入れのある大切な靴だったのです。修理にいくらかかっても構わないから、どうしても直したいと、強い希望をお持ちでした。
そういった熱い思いが伝わってくると、お客様の気持ちに寄り添いたいし、僕らも職人として絶対に何とか直して差し上げたいという気持ちになりますので、強く印象に残っています。
ARCODIO---実際、そのお客様のご希望には応えられたのでしょうか。
松木さん---革は保湿しても生き返るわけではないので、靴の底を外して分解して、似寄りの別パーツで構成し直して、アッパーを作り変えて…。1から作るのに近いのですが、ほぼ作り替えに近い修理を施しました。
10年、20年と履き込んでだいぶ汚れも付着している靴だったのですが、その雰囲気に近づけたいということで、新しい革にもあえて汚れのような加工を施して、雰囲気を近づけて組み立て直す作業をしていきました。
もともとは2、3万円程の靴だったようですが、新しい靴を買うよりも修理代の方が高く、6万円くらい掛かってしまいました。それでも大切な靴が蘇ったと、とても喜んでくださいました。
ARCODIO---なんと、そうだったのですね。修理というよりもまるでカスタムオーダーに近い作業ですね。修理で出来ることの概念が変わりました。
靴の修理といえば、高級靴を単純に長く履くためにするものというイメージが強かったのですが、それだけではなく、靴に込められた持ち主の想いを尊重し、お客様にとって愛着のある靴を大切に少しでも長く履き続けられるようにすることも、靴の修理という仕事の魅力のひとつなのですね。
松木さん---そうですね。価値観は人それぞれ違うので、それぞれのお客様の気持ちに寄り添って、出来る限りご希望に応えることを信条にしています。
ARCODIO---少し話は変わりますが、ビジネスシーンでは清潔感のある身だしなみがとても重要です。
その際、綺麗なシャツと同じくらい、手入れの行き届いたドレスシューズは必須だと思いますが、いかがでしょうか。
松木さん---昔からお洒落は足元からなんて言葉がありますが、本当にその通りだと思います。
いくら良いスーツを着ていても、足元が悪いと見栄えが悪いなと思います。高級靴を履けば良いというわけじゃないですけど、やっぱりちゃんと身だしなみのひとつとして靴もケアしてあげることは大事です。
以前、家の購入を検討していて住宅展示場に行ったのですが、その時の営業マンが靴のかかとを潰して履いていました。その姿を見たときに、このような人からは絶対に家は買わないなって思いました。
外見が人に与える印象は大きく、時間にするとおよそ3~5秒で第一印象が決まるとも言われています。なので、洋服だけに気を使うのではなく、足元までしっかりとケアをするっていうことは大事だなと思っています。
シャツも同じですよね。しっかりとアイロンを掛けた綺麗なシャツを着ている人をみると初対面でも好印象で、信頼感に繋がると思います。
ARCODIO---そうですね。私たちもシャツは常に白いまま清潔に着ていただきたいという想いがありますが、どうしても汚れてきてしまうものではあるので、できるだけお買い求めやすい価格にして、常に綺麗なシャツを着ていただけるようにと、努めています。
ARCODIO---靴の場合、1回履いたら少し休ませるとお聞きしますが、やはり何足かをローテーションしつつ、ケアをしてあげることが大事なのでしょうか。
お客様ご自身でのケアはどのようなことに気を付けたら良いでしょうか。
普段ARCODIOのシャツをお召いただいているビジネスマンも非常にご興味があると思いますので、是非、アドバイスをお願いします。
松木さん---靴の寿命はケア次第でだいたい最初の半年程で決まります。
例えば全くケアをせずに1足の靴を半年間履き続けると、その半年間のダメージはその後いくら回復させようとしても戻らない状態にまでなってしまいます。
足の裏やつま先は体の中でも1年中汗をかきやすい部位です。実は靴を履いた状態で約10時間過ごすと、両足でコップ1杯分もの汗をかいていると言われています。
革靴は足の汗が染み込み、屈曲し続け、体重という負荷も掛かり続け、アスファルトの熱を受けているという、革製品の中でもとくに劣悪な環境なのです。だからこそ連続で履かずに、休ませることが必要です。
よく最低3足、1日履いたら2日休ませるって聞くと思うのですが、実は3足だと足りなくて…。1回履いたらできれば1週間は休めて、4.5回履いたらケアをしてあげるのが理想です。そのため、毎日革靴を履く方には最低5足をローテーションすることをおすすめしています。5足あると1足ずつを十分に休ませることができるため、全部の革靴が長持ちします。
ケアについては、革の劣化を少しでも和らげて、進めないようにするという意味で保湿が凄く大事です。
人は冬とか乾燥している時期はとくに入浴後に保湿をしないと乾燥しますよね。食器を洗う時は手が濡れて、その後ちゃんと保湿をしないと手荒れしてカサカサになるじゃないですか。革も人と同じで、乾燥するとカサカサして割れてきてしまうんですよね。
人は生きているので皮膚が割れたとしても時間が経てば治りますが、革は死んでいるので、劣化はしてきますけど、絶対に再生はしないのです。
あとは雨の日用の靴を用意してもらいたいです。 靴だけに限らず、革製品すべて、洋服も同じだと思いますが、雨に濡れてしまうのはしょうがないのですが、雨による革のダメージは大きくて、ケアをしないと革がひび割れてきてしまうので、履く前後にしっかりケアしてあげる必要があります。くれぐれも雨に濡れたまま放置することがないようにして欲しいです。
ARCODIO---ご自身でケアもしつつ、困ったことがあればリファーレに相談ができるとなると、お気に入りの革製品が本当に長く愛用できそうですね。
幅広いお客様のニーズにお応えしてきているリファーレですが、今後の展望はどんなことをお考えなのでしょうか。
松木さん---最近はビジネススタイルの多様化に伴い、服装がどんどんカジュアルになってきています。そのため、今まではビジネスで必要だったから革靴を履いていたという人もいたのですが、最近では革靴離れが進んでいる状況です。
とくにインポートの高級靴は必要だから買うのではなく、本当に好きで靴を楽しみたいという想いで購入される方に絞られてきています。履く楽しみ、きちんとリペアをして、ケアをして、気に入ったものを長く愛用したいという人。靴の価値は値段ではなく、その靴に込められた想い、購入した時のことや履いていった場所などの思い出によっても変わってくるものだと思います。
だからこそ、靴に限らず革製品、その気に入ったものを長く愛用するためにサポートをしていきたいですし、そういった製品を「必要だから身につける」のではなく、「好きだから身につけたい」という人が増えてくるようにお手伝いをしていきたいです。
お手入れ次第では10年以上長持ちする革製品。
長い付き合いをするには、商品選びはもちろんメンテナンスが欠かせません。
そのためにも日々研鑽し、リファーレでは靴の背景や特徴、その靴の良さや楽しさを伝えていくことも大事だと思いますし、売りっぱなしではなく、革のことで何かお困りの場合には「リファーレに行けば大丈夫」という、お客様にとって頼れるオンリーワンの存在になりたいです。
その中でお客様との時間を大切にして、しっかり信頼関係を築きお店自体も愛してもらい、一人一人のお客様と長く付き合っていける、そういうお店を目指していきたいです。